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『動脈硬化』は、ドロドロ血液が引き起こす血管の老化現象 |
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生活習慣病の初期症状である『糖尿病』、『高脂血症』、『高血圧』、それと『高尿酸血症』、さらには加齢による老化が進行し、体のあちこちに不調を引き起こしたり、『虚血性心疾患』や『脳血管疾患』の原因となるのが、“血管の老化現象”と言われる『動脈硬化』です。
そして、この『動脈硬化』への危険因子の診断基準としてまとめられたものが、『メタボリック・シンドローム』です。 |
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『メタボリック・シンドローム』の診断基準は、こちらをご参照ください。 |
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動脈硬化とは、血管壁が硬くもろくなることをいい、血管の伸縮性が失われ、血管内腔が狭くなることで血液循環が阻害され、『高血圧』が進行するばかりでなく、『脳梗塞』、『脳溢血』、『心筋梗塞』、『狭心症』など多くの生活習慣病や『閉塞性動脈硬化症』、さらには『慢性腎臓病』を引き起こす元凶となります。
すなわち、生活習慣病の初期症状であるドロドロ血液状態を放置しておくと、全身に張り巡らされた血管がボロボロになり、寿命を縮めることになるのです。 |
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『動脈硬化』になるプロセスには、『高脂血症』や『糖尿病』、『高血圧』が引き金となって動脈の内壁(内膜)が傷つき、そこに脂質や泡沫細胞が沈着し、血管壁を持ち上げる粥状の塊(アテローム性プラーク)ができる「アテローム性動脈硬化」や「細動脈硬化」と、血液中のカルシウムが動脈の中膜に沈着し、石灰化することによって起こる「カルシウムパラドックス型動脈硬化(中膜硬化)」があります。 |
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『アテローム性動脈硬化』の進行プロセス |
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『高脂血症』に犯された血管内では、血液中の過剰なLDLコレステロールが、『動脈硬化』への危険因子となります。 |
- 血液中の過剰なLDLコレステロールが、血管壁面に張りつき、内皮細胞の間を通り抜けて内膜に入る。
- LDLコレステロールは“活性酸素”によって酸化され、「変性LDL(酸化LDL、過酸化脂質)」となる。
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- 血管内壁内のマクロファージ(貪食細胞、白血球の一種)が、変性LDLを異物とみなし取り込む。
- 変性LDLを取り込んだマクロファージは、脂肪分タップリの泡沫細胞(変性マクロファージ)となり、血管壁内に蓄積され、血管内壁が盛り上がりこぶ(アテローム性プラーク)ができる。
- このようにして、泡沫細胞(変性マクロファージ)は増え続け、血管壁にはコレステロールや泡沫細胞の死骸がプラークとなって蓄積する。
- また、内幕表面にひび割れが起こると、それをふさぐために血液中の血小板が集まってかさぶたのような血の塊(血栓)をつくる。
以上が、もっとも一般的な『アテローム性動脈硬化』の発症プロセスです。
『高脂血症』の中でも、中性脂肪が過剰になった「高トリグリセリド血症」では、HDLコレステロールが低下するばかりでなく、LDLコレステロールよりも小型のVLDLコレステロームや小粒LDLが多量に形成されます。これらは、LDL以上に血管壁に取り込まれやすく、動脈硬化の促進に深く関与していることがわかっています。 |
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全身をめぐる動脈 |
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『動脈硬化』が引き起こす『虚血性心疾患』、『脳血管疾患』 |
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動脈硬化になった血管の内腔は狭く、血液の流れが悪くなります。
本来、血管は弾力性に富み、その収縮によって血液の流れを助けています。ところが、動脈硬化になった血管は、その名が示すとおり血管壁の弾力性がなく、硬く、脆く、切れやすくなります。すると、その伸縮性が低下し、血液を送り出す力が衰えるために、さらに血行は悪くなります。しかし、心臓は血液をより強い力で送り出そうとするため、血圧が上がり『高血圧』となります。
また、弾力性を失ったゴムにひび割れが入りやすく、切れやすくなるのと同じように、弾力性を失った血管は、脆く、傷つき易く、その内壁がよく破断します。 |
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すると、傷ついた血管壁を修復しようとして血液中の血小板の凝結作用が働き、血管内壁に血の塊ができます。この血の塊(血栓)は、さらに血管内腔を狭くします。
また、血管壁内に蓄積していたプラークが飛び出たり、『血栓』が剥がれたりしたものが、血液の流れにのって脳の血管を詰まらせると『脳梗塞』を引き起こし、心臓の冠状動脈が動脈硬化になると『心筋梗塞』や『狭心症』を引き起こします。 |
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『脳梗塞』、『心筋梗塞』、『狭心症』についてはこちらをご参照ください。 |
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『動脈硬化』が引き起こす『慢性腎臓病』 |
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また、近年の研究では、腎臓の中にあって血液を濾過する機能を担っている糸球体が、『動脈硬化』によってその機能を失っていくと、血液の濾過が滞り血液中に老廃物が溜まり、さらなる血行障害が起こり始めます。すると、腎臓から血圧を高めるホルモンである「レニン」が分泌され、さらなる『高血圧』になって動脈硬化を加速することが分かっています。 |
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動脈硬化によって腎臓内の糸球体が破壊されると、
血液の濾過機能が著しく低下し始める。 |
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糸球体の毛細血管が動脈硬化により障害を受けると、血液の濾過ができなくなり老廃物の排泄がとどこおり、
慢性腎臓病や腎不全に至ります。 |
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腎機能が60%以下になってくると、血液の浄化機能に問題が生じはじめるため、『慢性腎臓病』と診断されます。そのまま放置しておくと、血液中に老廃物や毒素が留まりはじめ、腎機能をさらに奪う悪循環へと陥っていきます。
そして、最後には、腎機能が完全に失われ人工透析が必要となる『腎不全』となる危険性が高まります。 |
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血管の動脈硬化や腎機能の低下が起こり始めると、血液の循環機能と浄化機能が加速度的に劣化し始め、その回復が困難になっていき、血液循環そのものが体を蝕む悪循環へと変わっていきます。さらに、腎機能が低下すると、水分の補給を控えなければならなくなるため、さらに血液中の老廃物や不要物の排泄は難しくなります。
この悪循環に陥らないためには、動脈硬化になる前の『高脂血症』や『糖尿病』の初期の段階で血液を浄化し、健康なサラサラ血液を取り戻すことがとても重要になります。 |
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カルシウムパラドックス型動脈硬化 |
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『動脈硬化』の発症プロセスとしては、カルシウムの摂取不足からカルシウム欠乏になった血液中に、骨の中のカルシウムが過剰に溶け出し、骨粗しょう症と血管の収縮や石灰化を同時に引き起こす『カルシウム パラドックス』による動脈硬化もあります。
重度の動脈硬化になると血管が完全に詰まってしまい、そこから先への血流が閉ざされてしまいます。このような場合は、『閉塞性動脈硬化症』と診断され、血管のバイパス手術などが必要になります。 |
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一般に、骨の中のカルシウム不足が骨粗しょう症を引き起こすとの理由から、「カルシウム不足を補うために、カルシウムが豊富な牛乳を飲むことがいい。」と言われています。
確かにカルシウムは骨の主成分なのですが、決して、牛乳をたくさん飲めば飲むほどいいとか、カルシウムをたくさん摂れば摂るほどいいというものではありません。
もともと子牛の飲み物であり体内に吸収されやすい牛乳を人間が多量に飲むと、血液中のカルシウム濃度が急激に上昇するそうです。すると、生体が持つホメオスターシス(恒常性の維持)機能がはたらき、血中カルシウム濃度を適正値である9〜10ミリグラム(100cc中)に戻そうとして、腎臓は血液中のカルシウムを尿の中に過剰に排泄してしまいます。と同時に、過剰な血液中のカルシウムは血管壁に吸収されてしまいます。
カルシウムが過剰に排泄され血中カルシウム濃度が低下し過ぎると、今度は血液中にカルシウムを補充しようとして骨の中のカルシウムが血液中に過剰に溶出してしまいます。
つまり、血中カルシウム濃度の急激な変化に対して、血中カルシウム濃度を適正な値に維持しようとするホメオスターシス(恒常性の維持)機能が過剰に反応してしまうのです。
この一連のプロセスが長期間何度も続くと骨の中のカルシウムがどんどん減少して骨がスカスカになって、最終的に『骨粗しょう症』と診断されるまでになると指摘されています。
実際、毎日牛乳をたくさん飲んでいるアメリカ、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの各国では骨粗しょう症になる人が多くいます。日本でも牛乳を飲む習慣のなかった頃よりも、戦後の牛乳信仰が盛んになってからの方が骨粗しょう症になる人が増えています。
まさに、「過ぎたるは及ばざるが如し!」ということです。
カルシウム不足を補うには、日本人が古来から食していた小魚やエビ、海藻類や有機野菜などの吸収が穏やかな自然食品、そして“水”から摂ることが日本人の体の仕組みには最適なのです。 |
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このように、アテローム性動脈硬化とカルシウム・パラドックスによる動脈硬化(中膜硬化)は、同じ『動脈硬化』であっても、その原因や進行プロセスはまったく異なる血管の病気です。
つまり、それぞれの動脈硬化の原因を理解しておかなければ、動脈硬化を確実に予防することはできないのです。、 |
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参考書籍 |
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